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「相手が何とも思ってなくても、好きになるのが恋愛の難しいとこだよね」
「……そう、だね」
すぐに答えられなかったのは、自分の過去を振り返ったから。
中野君の時と同じ。
誰かを本気で好きになったのは翼が初めて。
片想いのツラさや胸の痛みは、私なんかじゃ計り知れない。
「……目の前であっさりと自分の長年の努力も虚しく奪われたら、ユイカちゃんはどうする?」
これが、嵐さんのもうひとつの思い。
「……二股はかけられたことあるけど、誰かに奪われたことが、ない」
だって、それなりに好きだった。
本気じゃなかった。
「そう。じゃあ、今の彼を親友に奪われたら、どうする?」
親友って梓?
梓が翼と付き合う?
「有り得ないから」
これは即答できる。
「例えばだよ。ユイカちゃんのとる行動は?」
「考えてもムダなことは考えない」
だって、想像すら出来ない。
梓は私を裏切らない。
翼も私を裏切ったりしない。
私はふたりを絶対に裏切ることはしない。
「分からないよ? お互いにタイミングがあえば、罪だって分かってても過ちは犯すもんだよ?」
「……それは嵐さんのことを言ってるの?」
笑っているのに、目の前にいる人が怖いだなんておかしい。
さっきまで、お互いに笑っていたはずなのに。
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