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「イヤなとこばっかり鋭いんだね」 「……どーも」 「ひとつぐらい答えてよ。人の想いに絶対なんかないんだから」 確かに、人も考えも変わっていく。 「それはそうだけど、マイナスなことばかりじゃないよ」 変わっていく想いもある。 第一印象は最悪。 近づくのも躊躇った。 会えば、相手のいいように翻弄されて。 でも、少しずつ知っていく。 細やかな心配り。 優しい言葉。 縮まる距離。 「相手を知ればイヤなことも沢山見えるけど、それも含めてもっと好きになるんじゃないの?」 相手のことばかりじゃない。 私自身、知らない感情があった。 「……綺麗事だよ」 「そうだね。確かに、私は彼のことをまだ深くは知らない。いつ、私から離れていくかも分からない」 それは、私や翼の意識や努力次第で変わっていく。 そう遠くない未来に、別れがくるかもしれない。 「嵐さんと私では状況が違うけど、奪われないようにするしかない」 「……奪われたら?」 好きだと自覚したのは最近。 今は、誰にも渡したくない。 「奪われた私自身にも問題はある。ちゃんとその訳を聞いて、納得するまで話し合う、かな」 「奪われて、納得なんかすんの?俺はそんなの」 「諦められなくても、ずっと想っていても離れてしまう理由があるなら聞きたい」 好きな人からそれを告げられることが、どれだけ苦痛だろう。 聞きたくない。 だけど、聞かないと前に進めない気がするから。
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