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「ごめんなさい」 「……」 「ちょっとトラブルがあってバタバタしてて」 「……そう」 「だからゴメンって」 「……聞こえてる」 こんなに怒っているのを初めてみる気がする。 昼休みの社食にて、ひたすら謝罪の言葉と頭を下げる。 「……何もなかった?」 「うん。ご飯食べて話して帰ったよ」 「何もなかったなら、もういいよ」 「……本当に、ごめんなさい」 何度目か分からない謝罪に、ようやく和希が目を合わせてくれた。 「次、こんなことしたら口きかないから」 何故、和希がこんなに怒っているか。 昨夜、嵐さんとの約束が終われば和希に連絡すると言ったのに、翼と会ったことですっかり忘れてしまった。 出社してから昼休みになってすぐに、和希から呼び出しがかかり今に至る。 「嵐から連絡は?」 「ないよ。私、嵐さんの連絡先知らないし」 私から聞く気はなかった。 嵐さんがあの短い時間で、何かを掴めたらいい。 「あー坂井君が結華いじめてる」 「いじめてねぇよ!」 「周りは痴話喧嘩してるって騒いでたけど?」 普段から優しい和希が、私相手にムスッとしていれば周りも騒ぐはず。 「冗談よ。結華がヘマしたんでしょ?」 「……まぁね」 昨日のことについて、梓に全てを話していない。 でも、内容も聞かずに私に頑張れって言ってくれたのは梓だけ。 「相模は知ってたのか?」 「全然知らない」 「はぁ!? 聞けよ。んで止めろよ」 「だって、結華が負けないって言ったから」 当たり前のように言った言葉に、私の頬が緩んでいく。
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