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「結華は約束を守っただけ」 「……それでも」 「坂井君は甘いの」 梓の一言に、言いかけた言葉を一旦は飲み込んでから和希は梓を見据えた。 「……今回は結華からしたら得体の知らないやつだったんだぞ。俺は忠告もした」 「それは」 「坂井君がその人と友達だから、でしょう?」 遮ろうとした私の言葉を、しっかりと梓が代弁してくれた。 私が頷くと、和希はポカンとしていた。 「それだけ?」 「充分じゃない」 私が言い切ると、和希が長いため息をついた。 「相模、甘いのは俺じゃなくて結華だろ」 「違うよ。結華はお人好しなだけよ」 「……なんかバカにしてない?」 「褒めてるのよ」 「あ、悪い」 携帯のディスプレイを確認してから、席を立った。 「なんか一瞬だけ怖い顔したよね?」 「うん。仕事かな?」 席を立ったわりに直ぐに戻ってきた。 そして何故か、和希の携帯を私に差し出した。 「誰?」 「嵐」 携帯を受け取った。 「もしもし?」 「あ、ユイカちゃん? 悪いね。連絡先知らないから和希使わせてもらったよ」 初めて会った時と同じように軽やかな口調。 「どうしたの?」 「会えない?」 「用件は?」 「俺の今後について、聞いてくれる?」 軽やかな口調から、静かに優しいものになった。 ふたりで会うのは避けたいと言ったばかり。 でも、聞いておきたい。
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