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「そんなもん、電話で行けませんって一言言えばいいじゃない。お人好しにもほどがあるわよ」 「……やっぱり?」 更衣室にて、名刺の件を話した。 「早く聞いてあげたい気持ちも分かるけど、明後日会うなら今日は止めときなさいよ」 梓の言うことは分かる。 どうやら、少しばかり嵐さんに情が移ったらしい。 「そうする」 「うん。んじゃ、先帰るね」 更衣室で電話するのは誰かに聞かれているようで気分的にイヤだ。 着替えてから出ると、書類片手に電話している和希が見えた。 言葉に出さないお疲れ様を言ってから、外に出た。 「梓?」 私より一足早く出たのに、追い付いてしまった。 「……何してるの?」 私の質問に、中野君と梓、何故か嵐さんが顔を向けた。 「ユイカちゃんお疲れ」 「……スタバで待ち合わせじゃなかった?」 私が困惑しているのに対して、中野君と梓の視線が突き刺さる。 「仕事が押してさっき終わったから、ここに来てみた」 「結華、電話は?」 「……今からするつもり、だった」 かなり遅かったみたいだけど。 「ところで、中野君はなんでいるの?」 「……和希に頼まれたんだ」 「何を?」 「こうくると予想してたってことか。さすが坂井君」 「ちょっとお姉さん、人を変質者扱いしないでくれる?」 笑いながら言っているわりに、この雰囲気にまるで負けていない。 半ば呆れていると、梓が嵐さんに負けず劣らずの営業スマイルで話し出した。 仕事以外のこの笑顔は、ほとんどない残業かムカついた相手に対する梓がイラついた時のものだ。
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