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「予定が変更になったらすぐに連絡するのがマナーじゃない?」 「メールはしたよ」 携帯を見てみると確かにメールが受信していた。 時間を見ると、本当についさっき。 「結華はふたりじゃ会わないって言ったみたいだけど?」 「俺はユイカちゃんと会った時はいつだってふたりきりになった覚えはないよ」 言われてから、初めて会ったのは会社だった。 和希達と話している途中で、嵐さんが会話に入った。 移動中はろくに話さなかった。 匠さんの店では、匠さんの目があって結果的に翼もいた。 「だからって、別に会社まで来る必要はないんじゃない?」 梓と嵐さんの掛け合いはまだかかりそう。 「ちょっと中野君、止めなくていいの?」 「相模はお前のためにやってんだから気がすむまでやらせてやれ」 そう言われてしまえば返す言葉がない。 「今日はユイカちゃんにただお礼しに来たんだよ」 営業スマイルじゃない、人懐っこい笑顔になった。 「時間が合わなくて、仕事の打ち合わせを外ですることになったんだ。ユイカちゃんが教えてくれたところ、雰囲気もお茶も接客も良いって得意先の人も気に入って、打ち合わせもいい感じに進んだんだ」 いつも胡散臭い笑顔じゃなくて、今のままでいればいいのにと思った。 「沖村さんも新規のお客さんが増えたって喜んでたから。あ、コレがお礼の品ね」 匠さんのお店のロゴが入った、白いケーキの箱。 「沖村さん?」 「沖村 匠さん。俺は甘いもの苦手だから。ついでで悪いけど」 受けとると、嵐さんは満足そうに微笑んだ。 翼は匠としか言わないし、そう言えばまともな自己紹介もしていない。 今更ながら、匠さんの名字を知った。 「ありがとう、ユイカちゃん」 ケーキを受け取った私じゃなく、ケーキを渡した嵐さんがお礼を言った。
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