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「ユイカちゃんって本当にお人好しだね」
笑いながら、まるで仕方ない子供でも見ているような感じ。
イヤな感じはない。
どちらかと言うと私が嵐さんに思っていたことだけど。
「そうみたいね」
梓からも散々言われたし中野君は呆れた顔してた。
「アイツもそんなところがあったよ。ユイカちゃんとちょっと似てるかな」
いつも何を考えているか分からないけど、誰かをこうして思い出している間は凄く穏やかな表情をする。
「先輩でしょう? アイツ呼ばわりしていいの?」
今更だけど、嵐さんのこの時間を止めてしまいたくなくて聞いてしまった。
「アイツなんてアイツで充分だ。俺をチャラ男や弟扱いしたんだからな」
「それは嵐さんも悪いじゃん」
私は嵐さんとその人の思い出は全然知らないけど、私まで嵐さんの後輩気分で笑った。
「じゃあ、明後日よろしくね。まさか和希まで来るとは思わなかったけど、手間が省ける」
「……和希とちゃんと話したことなかったの?」
「ガキだったんだよ。周りのことなんて考えてない。だから、気づいたときには遅かった、かな」
穏やかな表情の中に、後悔と諦めとどこか吹っ切れた感じが入り交じる。
「遅くないよ」
多分、嵐さんは和希にどう思われようと関係ないって思っている。
「決めたことがあるんでしょう?和希にだって分かってほしいじゃん。何のために和希に来てもらうと思ってんの?」
嵐さんはキョトンと私を見た。
「ユイカちゃんが心配だからでしょ?」
本当にそれしか思い浮かばないみたいだった。
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