3

7/16

2833人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
「神白の頼みなら」 「ありがとう」 坂井君が時計を見て立ち上がる。 「悪いな。そろそろ戻らないと」 「え、もう?」 時間を見ると、私はもう少し余裕がある。 「お前の顔見にきただけだ」 坂井君はそう言って笑みを浮かべて社食を後にした。 「……分かって言ってるよね」 いつもなら、ありがとうで済ますところが何も言えなかった。 徐々に熱くなる顔。 見れた笑顔に嬉しくなる。 「よし!」 気持ちを入れ替えて仕事に取り組んだ。 「お疲れ様です」 定時になり退社する人が多いため、私は少しずらして退社する。 携帯を取り出してメールや着信のチェックをする。 最近はメルマガばかりだ。 坂井君にメールしたほうがいいかなと悩んでいたら見慣れない番号からの着信。 でも、しっかり登録済み。 榊原翼 出るまで躊躇った。 意を決して電話に出る。 「……はい」 「あ、お昼頃にお電話いただきました榊原です。どちら様でしょうか?」 そう言えば、私の名前も連絡先も言わずに別れたんだった。 名乗っても分からないだろう。 「どうも。この間はピンクのワンピースをありがとうございました」 コレしかないでしょ。 「……着てみました?」 私だと分かったようだ。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2833人が本棚に入れています
本棚に追加