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……鋭い。
いや、私が分かりやすいだけかも。
「……別に」
「言いたくないこと?」
「本当になんでもないから。ただちょっと考え事してて」
「じゃあ、俺聞くから話してよ。ひとりで抱えてたって気持ち悪いだろ?」
「また、今度話すから。部屋も散らかってるし」
「気にしないよ?」
「私がするの! 大体、メールだって"今から行く"って言われても」
「結華がさっさと電話切るからだろ。言おうとしたら結華出ないし」
移動中は携帯を見なかった。
帰って来てからすぐにシャワーを浴びたから、気づくのがだいぶ遅れた。
「……連れて行こうと思ったけど無理そうだな」
シャワーを浴びたばかりで勿論すっぴん。
部屋着では出たくない。
翼は口元に手を当てて何やら思案中。
「だから、今日は」
雰囲気でなんとか帰ってくれそうだと思った私は甘かった。
「ココでキスされるか部屋に入れるかこのまま俺のマンションに行くか、どれがいい?」
てっきり諦めて帰るかと思った。
満面の笑みで言われた内容に、思わず思考が停止する。
「……他の選択肢は」
「認めない。選んで」
正直、どれもイヤ。
今じゃなかったら受け入れることができるのに、ちっぽけな意地がそれを拒む。
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