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｢で、急に自分のマンションに帰ろうと思ったのは？｣
｢……ひとりで考えたかったから｣
私の呟きに、翼の手がポンッと頭にのり優しく髪を撫でる。
｢それが悪いわけじゃないけど、ふたりで考えたほうが早く解決もするだろ。結華が悩んでいるのを黙って見てるのも結構キツイんだよ？｣
いつだって翼は優しくて。
私以外の人に優しさを分けて、大事な仕事をしているのに。
｢……っ！｣
｢ど、どうした結華!? 俺のせい!?｣
全然、自分の感情がコントロールできない。
悔しくて、情けなくて涙が次々溢れて止まらない。
｢ごめ、こんな、つもりじゃ｣
途切れながら言っている間も、全然止まらない。
｢好きなだけ泣いていいから。全部聞くから。我慢もしなくていいから｣
抱き締められて止まったのに、翼がそんなことを言うからまた止まらなくなった。
大人になって仕事して。
結婚して妻になって、子供が産まれて母親になったとしても、色々なものが邪魔をして今以上に素直に泣けない気がした。
こんなに思い切り泣くのも久しぶり。
一人暮らしの部屋でひとりで泣くのではなく、暖かい誰かのぬくもりに包まれて子供みたいに泣けることが嬉しくて仕方ない。
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