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「……俺が不安にさせてるの?」
散々泣いて、落ち着いてきたころに翼が呟いた。
顔をあげたくなくて首を左右に振った。
「結華が思ってることを言えばいい。我慢してる結華はイヤ」
「……じゃ、ない」
「ん?」
「不安じゃない。ムカついてるだけだもん」
額を翼の胸に押し当てながら、小さな声で反論した。
「何に?」
「……」
言うつもりではなかったから、やっぱり言いづらい。
「……自分に」
「なんで?」
「私も体験したし、翼が仕事を大事にしてるのは知ってる。ただ、私が……勝手にムカついて。そんな自分がイヤなの」
「……そんなこと?」
ムッとしたが顔はあげられず、拳をつくって肩を殴った。
「だってヤキモチじゃん。俺は嬉しいな」
さっきより強く抱き締められて、顔は見えないけど声は本当に嬉しそう。
「あ、だから電話早く切ったし出なかったの?」
図星なため何も言わなかった。
「そっか。まだあるだろ?」
その言葉に、翼の服を掴んでいた力が強まった。
「……なんで」
「んーヤキモチだけなら結華は泣かないと思って」
髪を撫でられ、耳元で翼が笑っているのが分かる。
初めて会った時からいつだって、私は見透かされている。
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