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「……翼には隠し事できないね」
「そりゃ、されたくないしね」
ポンポンとあやすように背中を叩く。
「……前も」
「うん?」
翼と出会ってから、それは徐々に蓄積されてきたのかもしれない。
「考えないようにしてたのかも。でも、梓のことがあって、嵐さんの件でも私は何も出来ないのかなって思って」
結果的に梓を引き上げたのは翼だった。
それに、私は途中で足を止めてしまったのだから。
「皆が頑張ってるのに、私は何も出来ない。何もしてない」
梓も和希も中野君も、嵐さんだって、きっと色々な葛藤があったはず。
私はただ流されて、どこか他人事なのかもしれない。
「問題はないほうがいいに決まってる」
顔を上げられず、服をギュッと握った。
「でも、なければ人間は成長できない」
「……うん」
私は変わらないなと内心ため息を溢した。
「よく言うだろ? 神様はそれを乗り越えられるから問題をその人に与えるって」
聞いたことはある。
でも、それを例え乗り越えられる力があったとしても、向き合わなければ意味がない。
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