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「逃げ出してしまう人も多いのに、結華は望むんだな」
小さく笑う翼は、どこか嬉しそうに髪を撫でる。
「だって、私だけ変われてないんだもん」
皆が変わっていく。
それは、目にみえるものじゃないくらい、かすかな光。
きっと、それを沢山集めて大きな光になっていく。
「人は簡単には変わらないよ」
当然のことだけど、翼に言われると無理だと言われているようで、耳が痛かった。
「その人が変わったと、結華が分かるのは結華自身も少しずつ変わっているからだよ」
思ってもいなかったことを言われ、顔を上げた。
「人は簡単には変わらない。時間と意識が必要だ。何度も失敗しても繰り返してしまう」
次は気をつけようと思っても、またやってしまったと思うことは結構ある。
「結華が変われてないってどうしてそう言える? それは自分自身では中々認められないものだよ」
「でも!」
今、人は簡単には変わらないって言ってたばかり。
「じゃあ、俺と出会う前は? 結華は変わりたいと望んでいた?」
望んでは、いなかった。
仕事と家の往復と、たまに友達とお茶したり遊びに行ったり、それをただただ繰り返して変わりたいなんて考えたこともなかった。
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