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「そう思えるようになったのも、変わっている証拠だろ?」
「……これは、翼の影響があったから」
翼だけじゃない。
杏さんや泉さんに会ったときも感じた。
自分の仕事ややっていることに一生懸命で楽しそうで。
どこか誇らしそうに見えた。
「キッカケは俺でも、そう望んだのは結華だからな。いくら他人が決めたことでも、自分が納得しなきゃ思いは動かないから」
「……私でも、変われるの、かな?」
声が震えて掠れてしまいそうになるのをなんとか抑える。
「変われるよ」
それは、どんな言葉より嬉しくて力強いものだった。
「だって、結華がそう願うんだ。大丈夫」
今日はもう涙腺が壊れてどうしようもない。
「泣いてばっかりだな」
「……誰のせいだと思ってんの?」
「俺は何もしてないよ?」
親指で涙を拭うと、視線が止まりお互いにそらせない。
触れるだけの軽いキス。
「……急に来て悪かったな。俺は帰るから戸締まりしっかりな」
「え? 帰るの?」
立ち上がった翼は玄関に行ってしまい、靴をはいて私と向かい合った。
「顔、見たかっただけなんだ。泣き顔まで見るとは思わなかったけど」
相変わらず笑って、私の頭を撫でた。
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