15

22/22
前へ
/395ページ
次へ
「……翼のせい、でしょう」 ムッと眉を寄せる私に微笑んで、 「俺は笑顔の結華がいい」 甘い言葉を紡ぐ。 至近距離で言われたそれは、かなりの攻撃力を持っていた。 「その顔も可愛いけどね」 「……面白がってない?」 「ん? 何が?」 はぐかして笑う翼は、きっと認めない。 「もういい」 諦めてそう言った。 「ごめんごめん。次会うのは結華が同僚を連れてくる日になると思う。何かあったり不安になったら、いつでも連絡してこいよ?」 「うん」 ちょっと寂しいけど、翼の邪魔はしたくない。 忙しいって聞いても、大丈夫って言うんだろうな。 帰るのを引き止めてるかなと思い、距離を取った。 すると、翼の腕が腰に伸びてきて開いた距離はまた縮まった。 「な、なに?」 お互いの額が当たり、キスしてもおかしくない。 「これより先は、結華が頑張ったらな。ご褒美楽しみにしといて」 先はと言われたのと、間近にある翼を見て一気に顔に熱が集まる。 「なに想像してんの?」 「なっ!? べ、別に!」 絶対分かってて言ってるし。 「そう? じゃあまたな。おやすみ」 最初から最後まで、振り回した当人がいなくなったことで、あっという間に静けさが広がった。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2834人が本棚に入れています
本棚に追加