2834人が本棚に入れています
本棚に追加
「……翼のせい、でしょう」
ムッと眉を寄せる私に微笑んで、
「俺は笑顔の結華がいい」
甘い言葉を紡ぐ。
至近距離で言われたそれは、かなりの攻撃力を持っていた。
「その顔も可愛いけどね」
「……面白がってない?」
「ん? 何が?」
はぐかして笑う翼は、きっと認めない。
「もういい」
諦めてそう言った。
「ごめんごめん。次会うのは結華が同僚を連れてくる日になると思う。何かあったり不安になったら、いつでも連絡してこいよ?」
「うん」
ちょっと寂しいけど、翼の邪魔はしたくない。
忙しいって聞いても、大丈夫って言うんだろうな。
帰るのを引き止めてるかなと思い、距離を取った。
すると、翼の腕が腰に伸びてきて開いた距離はまた縮まった。
「な、なに?」
お互いの額が当たり、キスしてもおかしくない。
「これより先は、結華が頑張ったらな。ご褒美楽しみにしといて」
先はと言われたのと、間近にある翼を見て一気に顔に熱が集まる。
「なに想像してんの?」
「なっ!? べ、別に!」
絶対分かってて言ってるし。
「そう? じゃあまたな。おやすみ」
最初から最後まで、振り回した当人がいなくなったことで、あっという間に静けさが広がった。
最初のコメントを投稿しよう!