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「着られないわよ」 「どうして?」 「あのワンピースのほうこそ私には似合わないと思う」 「……好きな色やデザインが似合うものとは限らないんですよ?」 「なにが言いたいの?」 「別に。ところで今どこ? 俺昼食べてなくて腹ペコなんだ。良かったら一緒にどう?」 少し考えた。 いつか会うなら今日でいい。 お腹もすいたし。 「まだ会社。もう出るから待ち合わせしよ」 「……分かった。あのさ」 「なによ?」 「名前教えて」 「……神白結華」 「ありがと。じゃあ会社出て駅着いたら連絡して」 「分かった」 時間はたったの三分ぐらい。 それが長く感じた。 久しぶりに会社以外の人間と話したせいか。 「さて、どうなるかな」 とりあえず、駅まで向かう。お互いに会ったのはあの時以来。 不安だ。 分かりやすく切符売り場の柱に身体を預け、榊原翼に連絡を入れる。 「もしもし?」 「お疲れ様。今どこ?」 「駅の切符売り場」 「丁度良かった。俺も着いたから。服装は?」 「黒のスカートスーツ」 「アレっぽい」 言われて携帯から声が遠くなる。 肩に手を置かれて、反射的に振り向いた。 「ひとり?」 ……誰、こいつ。
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