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「いらっしゃーい」 出迎えてくれたのは杏さんだった。 前のようにキッチリとしたパンツスーツが、更に出来る女性って感じ。 「翼から大体のことは聞いてるわ。ここでゆっくり、納得いくまでどうぞ」 「すみません杏さん。仕事中ですよね?」 「気にしないで。私の出番は後だから。それより」 杏さんが和希と嵐さんを促した。 「はじめまして。結華の同期で坂井です。お忙しいところ申し訳ありません」 「はじめまして。黒川です。縁があってふたりの知り合いです。今日はわざわざありがとうございます」 さすが営業。 挨拶が慣れている。 名刺を出そうとしたふたりを杏さんが手で制した。 「ご丁寧にどうも。ここでスタッフをしています、立花です。オーナーである榊原は生憎、今は手が離せません」 初めて会った時から、杏さんはあのテンションだったから、印象としては可愛らしい人と思った。 でも、こんなに丁寧に対応するのを見て更に憧れが大きくなった。 「どうするんだ、結華」 話すだけならと思ったけど、思った以上のふたりの険悪っぷりに少々悩む。 「とりあえず、お茶でもどう?」 にこやかな杏さんからの助け船にのった。 「あ、手伝います」
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