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「オーナーはまだ時間がかかると思うので、始めませんか?」
お茶もいただき、少しだけ和んだ空気は杏さんの一言で戻った。
「邪魔をするつもりはありませんけど、ここを提供する代わりに自分を偽ることは止めてくださいね」
笑顔なのに有無を言わせない威圧感を感じた。
「それと、これ」
杏さん以外が首を傾げた。
白い用紙にボールペンに色鉛筆が置かれた。
「杏さん、これは?」
まさか絵でも書いて時間を稼ぐなんてことないと思うけど、意図が分からない。
「これをね、こうやって円を六つ書いてほしいの」
見本を杏さんが書いて見せる。
和希と嵐さんも意味が分からないと、戸惑いながらも杏さんの指示に従った。
「で、その円を好きな色で好きなように塗って」
色鉛筆を差し出され、悩みながら黙々と塗っていった。
「あの、これに何の意味が?」
「意味があるからやってんの」
和希の質問をバッサリとぶったぎった。
「占い的なもんですか?」
嵐さんは楽しそう。
「どうかしらね。結華チャンはともかく、おふたりには面白くないかも」
ますます意味が分からなくなった私に、杏さんが手招きした。
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