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「待ち合わせしてるんで」 「でもまだ来てないんだ?」 知らないやつに痛いところを付かれてしまう。 不安が高まる。 一度しか会ってない上に、こんな人混みの中で会えるのかと。 「ね。いつ来るか分かんないならいっそ」 「お待たせ、結華」 名前を呼ばれたかと思ったら、背中に感じる気配。 肩に回された両手。 耳元にかかる吐息。 なにも考えられなくなる。 「なにか、俺達に用?」 「……いや」 ナンパ男はあっという間に人混みに紛れて姿が見えなくなった。 「ゴメンね、遅くなって」 別に謝ることじゃない。 というか、いい加減に。 「……あの」 「ん?」 「……離れて」 ナンパ男がいなくなってから、ずっと密着状態。 「あぁ、悪い。柔らかくていい匂いがしたから」 ニコッと笑う。 悪気がないから質が悪い。 久しぶりに感じる男性の体温に、顔が熱い。 わずかに香る香水に目眩がしそう。 「風邪? 耳まで赤いけど」 「違うわよ! あんたが馴れ馴れしいのよ!!」 「だって、不安そうに見えたから。思わず、ね」 「見えたって、後ろから来たじゃない」 「確認はするよ。人違いであんなことしないし」 「……いつもやってるんじゃないの?」 女連れてベッタリして、間違いなく女慣れしてる。 ……普通、よく知らない女相手にあんなことしない。
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