2834人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
「……和希が先輩を大切に想ってたのは分かった。でも、嵐さんの想いを否定しないで、お願いだから」
結果的に嵐さんの言動は、周りを振り回し傷つけてしまった。
それでも、悲しくないわけじゃない。
「妊娠させた彼女への責任は? お前は何をした?」
「……結婚、するつもりだった。でも、彼女は俺の前から姿を消した」
「な、なんで?」
「分からない。ごめんなさいって一言、メールが届いてからは音信不通」
和希が冷静さを取り戻し、冷たい口調のまま聞いた。
「じゃあ、お前は何も責任を果たしてないのか?」
「……あぁ」
「彼女はいない。先輩への想いも中途半端なまま。これからお前はどうする?」
「俺は周りを傷つけるらしい。誰かに好きになってもらうことも、誰かを想うことも……許されないな」
「そ、そんなこと」
「あるんだよ。人ひとりの人生を変えてしまったんだから。彼女がユイカちゃんの友達なら許さないだろ?」
何も、言えなかった。
「だから、もういい」
全てを諦めた声だった。
変えたいんだ。
足を止めることなく、前に進みたい。
『大丈夫』
「――良くない!!」
叫ぶと同時に手が出て、嵐さんに平手打ちをかました。
最初のコメントを投稿しよう!