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「お茶、淹れ直すね」
部屋を出る泉さんの後を追った。
「泉さん?」
いつの間にか、通路に座り込んでいた。
「大丈夫ですか!? 具合でも悪いんですか?」
「あー違うの。ちょっと緊張の糸が切れただけ」
緊張、してたの?
全然そんな風に見えなかった。
「顔に出ないからね」
そう言うと、私の手を取り泉さんの胸に当てた。
凄い早い、心臓の音。
「心の準備も全然出来てないのに飛び出しちゃったよ。でも、言えて良かった」
泣きそうな顔をしてたのが嘘みたいに笑う。
泉さんも気持ちを伝えなかったこと、後悔してたのかな。
「……泉さんは嵐さんのこと、今でも?」
「んーどうかな。大学卒業してから付き合った人もいたし。今は結婚とかより仕事が充実してるから」
立ち上がり、茶葉を取り出してお湯を注ぐ。
「大学の時は好きだったんですよね?」
「……うん。なんで嵐だったのか謎だね」
昔を思い出しているのか、どこか遠くを見ていた。
「最初はあんなにキライだったのに、気づいたらどうしていいか分からなくて」
「和希に協力してもらったんですね」
「私も可愛げない女だったけど、嵐の周りにいる女のようにはなりたくなかった」
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