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言われなくても、遊び人だった嵐さんの周りにいた女性のイメージはなんとなく想像がつく。
「瑠璃が嵐を好きなことは知ってた。私なんかよりずっと可愛くて、優しい子だった」
そんな人が、ついた嘘。
苦しめるとは思わなかったのだろうか。
「ウワサを聞いたときは、ふたりが決めて幸せならって思った。でも、ふたりとも全然幸せとは言えない雰囲気でね」
「……泉さんは何もしなかったんですか?」
好きな人が苦しんでいて、助けることもできたはず。
「……何が、できる?」
苦しさを押し殺した笑みで、私に問いかけた。
「結局、妊娠してなかったとしても、私はその問題に勝手に割り込めなかった」
助けることも、できない。
ただ、見ていることしかできない。
「嵐に想いを伝えたわけでもない。嵐に想いを伝えられたわけでもない私は、部外者でしかなかった。それに、嵐が決断したのは瑠璃との結婚だった」
責任という名の鎖。
「卒業してから結婚って聞いてた。瑠璃にとったらそれまでに本物にしたかったんだろうね」
「……後悔は、ないんですか? 嵐さん、ずっと忘れられなかったって」
「そんなの、ずっとずっと前にした。何もしようとしなかったことも、どんな理由があろうと選んだのは私も嵐も同じ」
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