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行くしかない雰囲気の中、翼の携帯が鳴った。
短い音楽はメールを受信したようだ。
「杏から。近くの居酒屋で席確保したから早く来いだってさ」
荷物をとり、一応携帯を確認すると梓からメールがきていた。
「……あの、梓も行きたいって言ってるんですけど」
「いいんじゃない? 杏さん逆に喜びそうだし」
「あ、じゃあ尚樹も呼びます」
「そういや中野ってどうしてんの?」
「俺と同じとこで働いてますよ」
「相変わらず仲良いわね」
梓にメールで場所を送ると、すぐに行くと返信がきた。
和希は嵐さんが忘れていったカバンを持って部屋を出た。
続いて泉さんが上着を取り、財布や携帯をバッグにいれて、翼に笑いかけた。
「先に行っときますから、あんまり遅れないでくださいね?」
「あぁ」
短い返事のあとに、賑やかだった部屋が静寂に包まれる。
片付けでも残っているのかと思い、翼に聞こうと顔を上げると、いつの間にか近くにいたことに驚いた。
「あ、片付け手伝うよ」
「それはいいから。それよりも」
腕を引かれ、気づいたら翼にキスされ抱き締められていた。
「……」
「ご褒美」
そばにある温もりに、私を包む腕。
背中に手をまわして、隙間を埋めるように力をこめた。
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