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｢……｣
｢お疲れ｣
｢……うん｣
｢頑張ったな｣
｢……っ！｣
頭を撫でられ、翼からの言葉にずっと抑えていた涙が溢れた。
｢全部は聞いてやれなかったけど、結華の思いはあの男にちゃんと伝わった。今は頭の整理が出来なくて混乱してるだけだ。そこは杏にでも任せておけばいい｣
色々なものが混ざりあって言葉にならない。
ただ、翼の言葉に頷いて、しがみつくことしかできなかった。
｢……ぅん｣
流れるだけ流れた涙はようやく止まった。
顔は上げられないまま。
離れようとする気配がして服をつまんで無言で訴えた。
｢タオル取ってくるだけ｣
耳元で囁かれ、力を緩めた。
肩を抱かれ、ソファーに座る。
タオルで目尻に残る雫を拭い、アイラインやマスカラが崩れたメイクを落としてくれた。
｢ん？｣
見つめたままでいる私に翼は首を傾げた。
答えずに、私は再び翼に身体を預ける。
｢どうした？｣
甘やかしてくれることに、その存在にまた泣きたくなった。
｢……わ、私｣
｢うん？｣
｢本当は、凄く……怖かった｣
今日この瞬間まで。
震えてしまいそうになる身体と逃げ出したくなる自分に必死に抗った。
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