16

40/40

2834人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
「うん」 「他人が思う壁と本人が大きいと感じるものは違う。そして、その人の周りの人たちは乗り越えて欲しいと願っている」 私が嵐さんに感じたように、翼や杏さんもそう思ってくれたから背中を押してくれた。 「……お節介じゃなかったよね?」 嵐さんの気持ちを考えたら今更でも悩んでしまう。 「結華は精一杯、あいつに伝えただろ?」 精一杯なんてもんじゃない。 必死だった。 「うん」 「あいつがお節介と感じるなら、まだ自分と向き合えてないだけだ。結華が落ち込む必要はないよ」 その答えはまだもらえていない。 翼の携帯の音楽がタイミング良く鳴り響いた。 「分かったから。すぐ行く」 短い通話に砕けた口調。 「杏さん?」 「そ。早く来いって。杏に付き合ってあんまり飲み過ぎるなよ」 「どうして?」 「……明日のこと忘れてんの?」 明日は仕事休みで。 「ああ!」 「やっぱり忘れてたな」 嵐さんたちのことで、すっかり忘れていた。 「出かけるんでしょ!? 忘れてたわけじゃないから!」 「……ふーん」 思い切り疑われてるのは気づかないフリ。 「は、早く行かないと杏さんたちに怒られるよ。行こ」 溢れる不安はもうない。 隣にいてくれる人が、それ以上の安心をくれたから。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2834人が本棚に入れています
本棚に追加