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「うん」
「他人が思う壁と本人が大きいと感じるものは違う。そして、その人の周りの人たちは乗り越えて欲しいと願っている」
私が嵐さんに感じたように、翼や杏さんもそう思ってくれたから背中を押してくれた。
「……お節介じゃなかったよね?」
嵐さんの気持ちを考えたら今更でも悩んでしまう。
「結華は精一杯、あいつに伝えただろ?」
精一杯なんてもんじゃない。
必死だった。
「うん」
「あいつがお節介と感じるなら、まだ自分と向き合えてないだけだ。結華が落ち込む必要はないよ」
その答えはまだもらえていない。
翼の携帯の音楽がタイミング良く鳴り響いた。
「分かったから。すぐ行く」
短い通話に砕けた口調。
「杏さん?」
「そ。早く来いって。杏に付き合ってあんまり飲み過ぎるなよ」
「どうして?」
「……明日のこと忘れてんの?」
明日は仕事休みで。
「ああ!」
「やっぱり忘れてたな」
嵐さんたちのことで、すっかり忘れていた。
「出かけるんでしょ!? 忘れてたわけじゃないから!」
「……ふーん」
思い切り疑われてるのは気づかないフリ。
「は、早く行かないと杏さんたちに怒られるよ。行こ」
溢れる不安はもうない。
隣にいてくれる人が、それ以上の安心をくれたから。
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