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店長さんとは大学生の時からの友人で、最近オープンしてからはよくここにくるらしい。 昼間はカフェ。夜はバーになるからいつ来ても落ち着ける。 「休みの日はいつもひとりで出かけるの?」 「都合が会えば友達と買い物とかお茶したりね」 「そうなんだ。今度は俺と行こうよ。結華の好きなもの知りたい」 運ばれた料理と綺麗な景色に少し気を緩めすぎた。 「今度……?」 「嫌?」 何事も直球でくる。 次に会うには情報が少なすぎる。 「……まだ質問の答えをきいてない」 「あぁ。興味かな」 覚えていないかと思ったら即答したのに驚いた。 「職業柄、その人が何を選ぶか興味深くてね」 「仕事は何してるの?」 「……内緒」 「言えないようなことしてるわけ?」 「いや。自分のやっていることに自信と誇りもある」 じゃあなんで言わないんだろう? 「あんまり、仕事っていう観点でやりたくないんだ」 余計分からない人。 仕事なら自信と誇りもあっていいはずだ。 「利益をもらうならそれに見合ったものを精一杯提供したい。仕事としてではなく、俺がその人に喜んでもらいたいから」 柔らかい表情の中に意思の強い瞳が入り交じる。 迷いも曇りもなければ嘘もない。 ……眩しいほどに真っ直ぐな人。
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