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「久しぶりに会った先輩置いて帰るつもりじゃないよね、坂井?」 「……疲れてるんじゃないかと」 「全然平気」 「……尚樹もいるし」 「中野寝てるしつまんない」 「……」 「諦めよ。私も付き合うから」 項垂れてしまった和希を不憫に思い、ビールを注いだグラスを差し出した。 一気に飲み干したグラスは空になり、私より早く泉さんがビールを注いでいた。 嵐さんは相変わらずのハイペースで、杏さんはご機嫌だ。 翼は呆れつつも自分のペースで飲んでいる。 席を立ち、嵐さんの隣に座る。 「じゃあ、梓チャンたちのとこ行くわ」 入れ替わりで、杏さんは席を外しわずかに沈黙が生まれた。 「飲み過ぎてない?」 「俺、酒強いから」 さっきまでの勢いはなくし、ゆっくりグラスを傾けた。 「……あのさ、ユイカちゃん」 「はい?」 「……」 「なに? 言いかけて止めないでよ」 翼は口を挟むつもりはないようだ。 注文した軟骨を美味しそうにつまんでいる。 「……ゴメン」 短く呟かれたそれは。 私を巻き込んだことへの罪悪感なのか。 何もしなかった自分自身に対しての謝罪なのか。 今を受け入れることが、苦しいのか。 分からない。
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