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「……また謝ったら怒るよ」
あまり減っていないグラスを揺らす。
不安はなくなった。
まだ、肝心な部分の答えを聞いていない。
「和希も行くってきいて、殴られるのは予想してた。まさか、ユイカちゃんに一発くらうとは思わなかったよ」
「……謝ってほしいの?」
それについては謝罪するつもりはない。
グラスについた雫がグラスを滑り指を濡らすのを、騒がしい中見つめていると、
「違う」
力が込められた声に顔をあげた。
グラスを置き、私を見返す瞳。
光は小さいけれど、曇っていなかった。
「手、傷はないけどユイカちゃんを傷つけた」
「え、手?」
あの直後は流石に痛かったものの、今はその痛みさえ忘れていた。
嵐さんに言われて思い出したぐらいだ。
「俺は殴られるぐらい仕方ないって思ってた。和希だろうとユイカちゃんの彼氏だろうが関係ないって」
初めて人に手をあげた。
そんなに痛くだろうと思っていたものは、想像以上に痛かった。
手は勿論のこと。
そうしなければ止まらない思いに胸が痛かった。
「ユイカちゃんの一発で目が覚めたっていうのかな? 今まで何人も平手打ちはくらったのに、男に殴られた時よりもずっと……きいた」
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