17

11/27

2834人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
「そう。既婚者としては嬉しいな」 未来は分からない。 違う相手かもしれない。 そういう話題になったこともない。 結婚だけが答えじゃないしゴールでもない。 今はゆっくり、もっと翼を知りたい。 「杏」 「なに?」 「そろそろお開きにするぞ」 「えーなんで?」 「……仕事に支障がきたら困るんだ」 泉さんや杏さんに言っても無駄だから翼に助けを求めたらしい。 「しょーがないわね。行ける人だけ次行きましょう」 会計は男性陣が出してくれたらしく、私たちも財布を出したが断られた。 「ユイカちゃん、今日は本当にありがと。やっと前に進める気がする」 「ここからだよ。お互い頑張りましょう」 「和希」 嵐さんが和希に向き合って、瞳をそらすことなく謝罪した。 「……悪かったな」 「なんのことだ? 嵐の気まぐれには慣れてるよ。それに、俺たちはライバルなんだろ?」 「……そう、だったな」 「バカ。忘れんなよ」 事務所に向かう前がウソのように、和希は嵐さんに笑みを浮かべていた。 和希は終電にギリギリ間に合うからと駅に向かった。 その後ろ姿を見つめたまま嵐さんは動かなかった。 「和希、嬉しそうだった」 「……まだ、ライバルだなんて言ってくれるとはね」
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2834人が本棚に入れています
本棚に追加