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「そう。既婚者としては嬉しいな」
未来は分からない。
違う相手かもしれない。
そういう話題になったこともない。
結婚だけが答えじゃないしゴールでもない。
今はゆっくり、もっと翼を知りたい。
「杏」
「なに?」
「そろそろお開きにするぞ」
「えーなんで?」
「……仕事に支障がきたら困るんだ」
泉さんや杏さんに言っても無駄だから翼に助けを求めたらしい。
「しょーがないわね。行ける人だけ次行きましょう」
会計は男性陣が出してくれたらしく、私たちも財布を出したが断られた。
「ユイカちゃん、今日は本当にありがと。やっと前に進める気がする」
「ここからだよ。お互い頑張りましょう」
「和希」
嵐さんが和希に向き合って、瞳をそらすことなく謝罪した。
「……悪かったな」
「なんのことだ? 嵐の気まぐれには慣れてるよ。それに、俺たちはライバルなんだろ?」
「……そう、だったな」
「バカ。忘れんなよ」
事務所に向かう前がウソのように、和希は嵐さんに笑みを浮かべていた。
和希は終電にギリギリ間に合うからと駅に向かった。
その後ろ姿を見つめたまま嵐さんは動かなかった。
「和希、嬉しそうだった」
「……まだ、ライバルだなんて言ってくれるとはね」
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