17

16/27

2834人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
誰が開けたかなんてすぐ分かった。 「いきなり開けないでよ!」 「早く来ない結華が悪い。次はこっち。座って」 リビングのテーブルには、事務所で見たことあるメイク道具一式が綺麗に並べられていた。 「メイクするの?」 「俺がな」 「……出来ないんじゃ」 前に泉さんがそんなことを言っていた気がする。 「安心しろ。杏は別格。苦手なだけで出来ないわけじゃない」 「私がしたらダメなの?」 案の定、頷かれた。 「言ったろ? 今日は特別だからな。俺がする」 杏さんにしてもらった時よりも、大きい手が肌を滑る。 目を閉じて、翼に全部任せる。 メイクが終わったのか、筆やパフの感触がなくなった。 「まだ、ちょっと目閉じてて」 髪に指が絡まる。 人にやってもらうのは何故か気持ち良い。 それが、翼なら尚更。 「いいよ。目開けて」 テーブル越しに翼が微笑む。 鏡を持って私を写す。 フワフワに巻かれた髪。 肌にあったファンデーション。 パウダーがあてられ肌がキラキラしている。 いつもより太く引かれたアイライン。 マスカラによって更に目力が増した。 ピンクのラメが入ったアイシャドウ。 ほんのり色づいた頬。 ぷっくりした唇に光るグロス。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2834人が本棚に入れています
本棚に追加