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「なにを?」
玄関にふたり。
中々、動こうとしない。
「可愛いよ、結華」
綺麗にメイクアップされ、服にアクセサリー、靴まで用意されて申し訳なく思ったのが吹っ飛んだ。
「いつでも言えるけど、やっぱりいつも俺が一番に言いたい。他の男なんか見るなよ?」
見るわけない。
翼以外の男なんか目に入らない。
頷くと、ドアが開いた。
「ちょっと歩くから、足痛くなったら言ってな」
「分かった」
私に合わせた歩調。
見上げれば大好きな人。
隣にいる安心感。
まだ、恥ずかしさはあったけど、どうせ誰も見ていないと思ったら気が楽になった。
あまり乗り慣れない路線。
ホームで翼と並んで待つ。
電車を待っている間、気のせいか他人と視線が一瞬混じることが度々あった。
「……ねぇ、やっぱり私どっかおかしい?」
小声で翼に問いかける。
何故か肩に腕が伸ばされ、さっきよりも密着した身体に熱が上がる。
「結華が可愛いから、だよ。堂々としていればいい」
そう言われても。
電車に乗れば、近くにいたサラリーマンにガン見され、大人数でいた学生にチラチラ見られたりと、なんかすでに疲れてしまった。
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