17

19/27

2834人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
初めておりる知らない駅。 「こっち。ちょっと歩くよ」 手は繋がれたまま。 駅を出ると、可愛い雑貨屋やおしゃれなカフェがあり目を奪われる。 「よく来るの?」 迷いのない足取り。 微妙に手に力が込められた気がした。 「たまにね。前は庭みたいなもんだったよ」 「あとで色々お店寄っていい?」 「いいよ」 力が込められていた手が、少しだけ緩まった。 「ここ」 着いたらしい。 大きなビルについた看板。 「……Venus?」 「行くよ」 躊躇うことなく足を踏み入れた。 エレベーターにのり、ビルの一室の前。 ノックすると、綺麗な女性が姿を見せた。 「翼さん、お久しぶりです。社長は今、お客様のメイク中です。中でお待ちください」 「分かった。終わったら声かけて」 「失礼します」 会釈して女性は奥の部屋に戻っていった。 気になって聞きたいことはたくさんあるが、 「……誰、あの人?」 とりあえず、これだった。 「ここのスタッフ。杏や冬谷みたいなもんだ」 「随分、仲がいいのね」 ただのスタッフに名前で呼ばれるなんて。 「またヤキモチ?」 意地の悪い笑顔が向けられ、見たくなくて顔を背けた。 「安心していい。ここのスタッフとは昔からの知り合いなんだ」
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2834人が本棚に入れています
本棚に追加