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「……昔からって」
さっきの女性に言われていたように、久しぶりらしい。
キョロキョロと視線を泳がせている。
「ここは、俺に全てを教えてくれた人の会社。カラーだけじゃない人生の師匠がいるんだ」
特別だからとは言っていた。
でも、そんなに大事な人と会うなんて思ってもいなかったから、心の準備が全く出来ていない。
「なっ、早く言ってよ! 私、何も持ってきてないのに!」
「そんなのいらないよ」
「だって!」
翼の師匠ってことは、私が今こうしているのはその師匠さんのおかげでもある。
「今日は結華を会わせたかっただけだから。肩苦しくしなくていいよ」
優しく笑って髪を撫でる。
「……大事なことでしょう?」
翼の手が止まり、何か言う前に先程の女性が現れた。
「お待たせしました。翼さん、結華さん。社長がお待ちです」
「ありがとう。ちょっと時間もらうな」
「大丈夫です。社長も首を長ーくして待ってましたから」
「……だろうな」
思わず女性を見てしまう。
私、自己紹介していないはずなのにこの女性は確かに私の名前を呼んだ。
見つめ続けていたせいか、女性と目が合いニコリと微笑まれた。
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