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深呼吸をひとつ。
翼がドアを開けた。
「失礼します」
「遅いわ」
開口一番がそれだった。
「……お久しぶりです。お変わりないご様子で」
「嫌味のつもり?」
「そんなこと言えませんよ」
想像してた。
師匠や社長とか、親みたいな存在だと言われ勝手に男性だと決めつけていた。
私の目の前には、衰えを知らないハリのある肌に綺麗にメイクしている女性。
派手ではないが地味でもない、ポイントをついたおしゃれな装い。
お母さんより年下だろうと思うその女性は、私に視線を流した。
「あ、はじめまして! 神白結華です。いきなりお邪魔して申し訳ありません」
師匠さんのもつ優雅さ。
圧倒的なオーラに萎縮してしまう。
「貴女が?」
「はい」
「……翼がメイクしたの?」
「えぇ。一応、全身させてもらいました」
師匠さんの目が厳しく光った。
「スプリング、でしょう」
「はい」
「アクセサリーもっとつけてもいいわよ。右目のシャドウ、ムラがある。ファンデーションもっと艶出しなさい」
パッと見ただけでこれだけのダメ出し。
「杏にばかり頼らないように。もっと腕あげなさい」
「努力します」
「当然よ」
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