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ポカーンとするしかない私に、師匠さんが笑顔を向けた。
「挨拶が遅れてしまったわね。この子の師匠でもある真由美です」
「いえ、お忙しい中すみません」
座るように促され、ノックのあとで麻弥さんがお茶を持って姿を見せた。
「ごゆっくり」
麻弥さんが下がり、室内にいい香りが溢れる。
「結華さんのベストカラーはピンクなのね」
「そうみたいです」
「苦手だって聞いたけど、今はどう?」
翼や杏さんにメイクしてもらって、キライだと思っていた服を着て、苦手なピンクゴールドのアクセサリーまでつけて。
「……最初は、あり得ないって思っていました」
これから先もそれは変わらないと思った。
「洗脳と言えば聞こえは悪いですが、いい聞かせることはなんとなくしてて」
そのおかげで、悪くないのかもと思えるようになった。
「……こんな風にひっくり返されるなんて思いませんでした」
今の自分も良いかもと思ってしまった時点で、認めるしかない。
「ピンク、キライじゃないです」
翼に顔を向けると、ちょっとだけ子供っぽく笑った。
「それを受け入れたなら、あなたは自分も受け入れたというですね」
真由美さんと会うのは初めてなのに、ずっと見守っていてくれたかのように笑う。
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