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「そう言われても、実感はないんです」 「形があるわけではないですからね。でも、とても大事なことなんですよ」 真由美さんが言いたいことはなんとなく分かる。 以前の私は、自分に興味がなくて。 それを、買い物や梓たちと飲んで誤魔化していた。 新しい自分を探すこともしなかった。 「結華さんはなにか夢はあるの?」 「夢、ですか?」 昔なら多少はあった。 社会人になってからは、そんなものを考えなくなった。 夢というより、願望のほうが強い。 「……特には」 「結婚願望はあるの?」 「まぁ人並みに」 「じゃあ、この先。どんな女性でいたい? 結婚したとしてどんな母親でいたい?」 予想外の質問に、すぐに答えることができなかった。 どんな女性? 綺麗でいたいとか? 悩んで答えが出ない私に、真由美さんが自分のことを話してくれた。 「私は"強い自分"でいたかった。社長なんてやってるけど何度も辞めようと思った。だって、沢山の責任をひとりで背負うなんて昔は考えられなかったから」 こんな大きなビルで社長に就いてる人でも、不安を感じるんだ。 「沢山の責任を背負うことには変わらないけれど、ひとりじゃないのよね」
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