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翼を見る目が優しい。
「沢山のスタッフが支えてくれてる。旦那に翼も杏も大事」
不安を押し殺して、それでも誰でもなく自分が前に立つ人。
私なんかが言っていいのか分からないけど、強いなって思った。
外面だけじゃなく、内面もなんて綺麗な人。
「どんな小さなことでもいい。夢だからと諦めるのではなく、それを見つけて努力し続けたら必ず形になって自分に返ってくる」
私に、見つけられるかな。
……小さなことでもいい、か。
壁にある大きな鏡に自分が映り、一瞬だけ過ぎた思考。
再び、ノックの音した。
「すみません、社長。相沢社長からちょっと急ぎのお電話です」
「分かったわ。すぐ行く」
「じゃあ、俺たちも帰ります。また、日を改めて挨拶しに来ます」
「それもそうね。結華さん、それじゃさっきの質問の答えは、次に会うまでの宿題ということにしとくわね」
「あ、はい」
立ち上がり、慌てて頭を下げその後ろ姿を見送った。
「どうでしたか?」
麻弥さんがお茶をトレイにのせ、私に微笑んだ。
「なんか、緊張しました」
真由美さんの雰囲気に私まで背筋を正してしまう。
日常にはない、ほど良いイヤではない緊張感。
「分かります」
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