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「ちょっ、ズルい!」
「ズルくない。言わないからだろ。それとも、言えない理由があるのか?」
あるから絶対に言えない。
あとほんの数センチで唇が当たりそうになった瞬間、タイミングを見計らったように自宅用の電話が鳴った。
主に仕事で使うらしいFAX付きの電話。
舌打ちをしながら、渋々私から身体を離した。
やっぱり仕事の電話だったようで、いつもより丁寧な話し方。
「あれ?」
マナーモードにしたままだった私の携帯のランプが点滅していた。
確認すると、杏さんから着信。
翼を見ると、まだ電話中だったのですぐにかけ直した。
『お疲れー結華チャン』
「お疲れ様です。どうしました?」
梓のことと嵐さんたちのことは既に了承を得た。
『ちょっと用事でVenus行ったんだけど、結華チャンも行ったんだって?』
「はい。でも、直前まで何も教えてくれませんでしたよ」
『翼らしいわ。それで本題なんだけど、約束の日までにVenusに行ける日ないかな? 仕事帰りでいいんだけど』
それなら行けそうだ。
でも、なんでVenusに?
「大丈夫です。あの」
『真由美さんと麻弥に会ったんでしょう? 真由美さんは私のメイクの師匠でもあるのよ。麻弥は一緒に受けた同期ってとこね』
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