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「……」
「私、今日は帰る」
「は?」
このまま泊まれば絶対に言うまで何かされそう。
「結華!?」
「あ、それから今週ちょっと忙しくなるから来れないかも」
「はぁ?」
「じゃあね。行く時はメールする」
「結華!」
まだ何か呼ばれた気がするし、ちょっと良心が痛んだ。
それでも、杏さんに聞いたことを思い出すとこれぐらいはいいかと思い直した。
翼に言ったように、マンションには寄らない日が続いた。
代わりに、乗り慣れない路線も今では慣れたもの。
仕事が終わってからの立ちっぱなしは正直キツかった。
でも、家に帰って疲れだけが身体を支配するのではなく、充実感のある疲れはイヤではなかった。
疲れて帰ることには変わらないから、翼からの着信に気づかずメールも返せない状態だった。
翌日の昼休みに返信はしても、何をしている系の質問には一切答えなかった。
「榊原さん可哀想」
「……梓、顔が笑ってる」
「あ、やっぱり? 今頃イライラしてるのかなって考えたら面白いに決まってるじゃない」
「はいはい」
「結華だってここまでするなんて怒ってるんでしょう?」
「……だって」
携帯が振動した。
それと同時にドアが開いた。
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