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「なんで真由美さんが翼のお母さんだって教えてくれなかったのよ!?」
「……それか」
手で顔を覆い、長いため息をついた。
杏さんに聞いたのはこれ。
『……それは確かに感じるけど、そうじゃなくて』
「え?」
『だから、未来のお義母さんに会って緊張した?』
杏さんの言っていることが理解出来なくて、やっと頭が働きだした。
「えーっ!!」
私のリアクションに電話越しにため息をつかれたのが分かった。
『……知らなかったの? 私はそれも含めて会わせたと思ったんだけど』
今、この瞬間に知った事実。
『まぁ、気にしてないと思うけどね』
道理で、自己紹介の時に"師匠でもある"って言ったんだ。
翼を優しく見る目。
同業者でもあるけど息子だ。
大事に決まっている。
杏さんは翼のお兄さんの妻。
身内だ。
「結華チャン、真由美さんに謝り倒してたわよ」
「……連れて行ったのか?」
「いけない?」
「結華」
冷静さを取り戻し、私の手を握った。
「母親だと黙っていたのは悪かった。ただ、あの日は『師匠』として俺の尊敬する人として会ってもらいたかった。親子としても仕事上は上司だからな」
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