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親子でもあり、上司でもある。 その切り替えを公私混同せずにいられるのが、この親子なんだろう。 「教えても良かったけど、結華に余計な気遣いをさせたくなかった。それに、俺だって仕事で母さんに会うのは緊張するんだ」 そう言えば、手を繋いで向かう途中も繋ぐ手の力が強かった。 あれは緊張からのものだったらしい。 「それに、また日を改めて行くって伝えてるから大丈夫」 それまで知らないなんて、絶対イヤだ。 「あのね」 私が更に言おうと口を開きかけたが、翼がそれを遮った。 「今度は、俺の恋人として母さんに会わせる」 それは、絶対の約束。 「手放す気なんかない。俺と母さんや杏と家族になるの本気で考えて」 家族になる。 言葉にするのは簡単。 「……だから、ここ職場ですって!」 泉さんの声に、ふわふわした感情が小さくなった。 「結華チャンと梓チャンはこっち。泉チャン、あとお願い」 「分かりました」 杏さんに付いて部屋を出た。 頭の中は翼の言葉でいっぱいで。 赤くなる顔を見せる前に部屋を出て良かった。 「……ムカつく」 「梓?」 「あんな風に言うなんてズルいと思いません? 杏さん」 杏さんは嬉しそうにホワイトボードを準備しだした。
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