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「翼だもの」 それだけで私たちは充分納得するものだった。 隣の部屋からはどっちが上司か分からないぐらいのお説教が聞こえてくる。 「私たちがいようが、職場だろうが関係なく結華チャンを誰にも渡したくないのね」 「公私混同し過ぎですよ」 梓が怒りと呆れをため息として吐き出した。 「昔から、自分の気に入ったものとか離さなかったって旦那が言ってたわ」 「厄介な人に捕まったわね」 赤い顔を押さえながら、冷やかしてくる梓を流した。 「さて、おしゃべりは休憩の時にしましょう。ふたりとも、スキンガイドトークはバッチリ?」 Venusに行った時にまず聞かれたことがあった。 「メイクする上で大事なことは?」 「……化粧品?」 「……技術?」 「確かに両方大事。でも、もっと大事なのは土台。素肌ね。肌がガサガサだったら、いくらファンデーション重ねても限度があるわ。素肌が卵みたいに綺麗だったらメイクもより映えるからね」 なるほど。 と、梓とふたり納得したところに、 「他人のメイクしようって人間が肌の構造も知らないなんて問題外よね? 翼の事務所に行くまでに完璧に暗記してくること」 スキンガイドトークがビッシリ書かれたプリントを笑顔で渡された。
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