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一週間もないのに無理だと言おうとして、 「翼を驚かすならこれぐらいしないとね」 有無を言わせない笑顔の迫力に、頷くしかなかった。 「……自信ないです」 「……私も」 大体は覚えても、中々頭に入らなくて苦労した。 「大丈夫よ。復習も兼ねるから」 ホワイトボードに拡大された肌の構造が張られていた。 「あとで翼の前でやってもらうから、そのつもりでね」 実際は肌の構造なんて全然知らない人相手にスキンガイドトークを言うのに、翼相手に既に緊張してきた。 「間違ってもいいから。慣れだし間違ったとしても気にせずに続けてね」 知り合いに見られたり聞かれたりするのって、また違った緊張感がある。 「榊原さんも当然言えるんですよね?」 「多分。最近は勉強がてら泉チャンがやってるけど、頭には入ってると思うよ」 それを聞いて、梓がニヤリとしたのは見間違いだと思いたい。 「それじゃ、まずはリハーサルしましょうか。どっちからやる?」 梓と目が合うと、どうぞと言われてないのに聞こえてきた。 「……やります」 どうせ、あとでみんなの前でやるんだか一緒だと席を立った。 梓と杏さんの視線を感じながら、ホワイトボードの前に立つ。 「自分のタイミングでいいわ」 深呼吸をして、頭に溢れる言葉をひとつひとつ口にした。
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