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「そろそろお昼にしましょうか。お弁当持ってきた? コンビニ行く?」
「あ、お弁当持ってきました」
「私も」
「じゃあ、お茶淹れてくるから先に食べてて」
「あ、手伝います」
反射的にそう言えば、杏さんはにこやかに微笑んだ。
「ありがとう。でも大丈夫よ。午後からも頑張ってもらうから」
杏さんが部屋を出ると、梓が小さく呟いた。
「……鬼」
本人には怖くてとてもじゃないが言えない。
心の中で頷き、お弁当を取り出して杏さんを待った。
その間に、梓とスキンガイドトークの復習。
「この辺がここと間違えちゃうんだよね。梓は大丈夫そう?」
「私は最後らへんがたまに抜ける」
図を使ってやるし聞いているだけならそれほど長く感じない。
実際に自分がやると、緊張して言葉が出てこなかったり、覚えたはずなのに一行飛ばしてしまったりと散々。
「スキンガイドトークだけでもいっぱいいっぱいなのに、スキンケアからメイクの手順にその意図まで頭にいれさせるなんて無茶言ってくれるわ」
まぁ、私と梓も決めたことだから、その無茶をなんとかしたんだけど。
それに翼への意地もあった。
こんな自分がいたんだと新しい発見ではあったが、
「……仕事以上に頭使う」
現状は中々厳しい。
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