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「お待たせ。先に食べてて良かったのに」 テーブルに開けられていないお弁当と、この数日でボロボロになったプリントを見て、杏さんがカップを置きながら嬉しそうに言った。 「そこまで熱心だと私もこの仕事やって良かったって思えるわ」 杏さんもお弁当を持って腰かける。 「翼と泉さんは?」 「もうすぐ来るわ。先にいただきましょ」 翼が来ると聞き、プリントをしまった。 「翼、さっきより驚くわね」 そのためだけにやってきたわけではないが、それ相応のリアクションは欲しい。 「お疲れ様です」 先にお弁当を食べていると、翼と泉さんがようやく姿を見せた。 「お疲れ」 「……お疲れ様」 自分の職場でもなく、仕事終わりに言うのでもない。 翼の近くでこうして言い合えるのが、嬉しいけど気恥ずかしい。 「翼、午後は急ぎの用ある?」 「なんで?」 「いいから」 「予約の時間までは書類の整理するつもりだけど?」 「じゃあ、その前に少し付き合ってもらうから」 「……拒否権は」 「なし。当たり前じゃない」 梓と目を合わせて、言葉無く笑った。 先に食べ終えた私と梓と杏さんは隣の部屋で待機。 ギリギリまで頭の中で繰り返す。
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