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「しかも、女連れてました」 「あーあ。先生ダメじゃん」 「サイテーね」 「……だから言いたくなかったんだよ」 そう言ってグラスを傾けた。 「じゃあ結華チャン、今度事務所来るときはそのワンピース着てきて」 「……なんでですか?」 「見たいから。お願い」 正直、嫌だ。 いくら杏さんのお願いでも勇気がいる。 「着てくるのがイヤなら持ってきて、見せるときに着替えれば? それなら大丈夫じゃない?」 渋る私に泉さんが妥協案を出してくれた。 そっちのほうがいくらかマシだ。 「それでいいなら」 「楽しみにしてるから。絶対よ」 何気に釘を刺されたようだ。 まぁ杏さんを敵にはしたくない。 「はい」 「良かったですね、先生」 「なにが?」 「実は選んだ先生が一番見たかったんでしょう?」 「別に」 「そう言うわりには、ファッション雑誌が沢山あったけど。結華チャンのコーディネートでも考えてたんでしょ?」 「……」 否定も肯定もせずに、料理を口にしてグラスを空にした。 「それにしても、不思議な縁ですよね」 彼が沈黙を破らないと諦めて、泉さんが私に視線を向けた。 「結華ちゃんが先生に会ったから、私と杏さんとココにいるんだもん」 「本当ね。実際に知り合いなわけじゃなかったんだから」 ふたりに言われてあの日を思い出す。 ムカついて、せっかくの休みが最後の最後で台無しになってしまった。 連絡しなければ関わることもなかったのに。 ひとつの出会いと一回の連絡から、ここまで広がった縁。 結果オーライ、かな?
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