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目が覚めたら見知らぬ天井。 微かに香るいい匂い。 「結華」 私を呼ぶ、優しい声。 「……は?」 徐々に頭がまわり出す。 馴染みはないけど、少しだけ覚えがある。 「おはよう」 「……おはようございます」 「覚えてるか? 昨日、杏と冬谷に絡まれて飲んだこと」 ……そうだ。 彼との出会いが杏さんと泉さんに出会うキッカケになったからって、また乾杯して。 その後は、ひたすら飲んだことしか覚えてない。 彼とこの部屋にいるってことは潰れたか……。 ゆっくりと身体を起こし時計を見る。 家に帰るのを考えてか、出社まで時間がだいぶある。 「リビングにおいで。珈琲飲む時間ぐらいあるだろ?」 彼は一足早く寝室を出た。それに続くようにリビングに向かう。 珈琲のいい香りが広がっていた。 「どうぞ」 「いただきます」 シンプルなマグカップ。 砂糖とミルクを多めに入れて飲むのが好き。 「あの、昨日って帰りは杏さんと泉さんは?」 「俺ひとりじゃ無理だから兄貴に迎えに来てもらったよ。冬谷は杏の家の近くだから預けてきた」 だからふたりともいないのか。 「二日酔いしてる? 薬いる?」 身体がダルいけど、お酒はあんまり残っていない。 飲む前の、彼の忠告のおかげかもしれない。 「杏と冬谷が絡んで悪かったな。酒が入ると普段より手が出せないから」 長いため息のあとに苦笑いを浮かべている。 ふたりともエネルギーが強いから、手が出せないのも分かる。 「でも楽しかったですよ」
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