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「なら良かった」 「珈琲ごちそうさまでした。それじゃ、帰りますね」 「送ろうか?」 「……結構です」 荷物を持って玄関に向かう。 「また迷惑かけてスミマセン。お邪魔しました」 「全然迷惑なんかじゃないよ。またおいで」 「それじゃ」 「またね」 エレベーターをおりてマンションを見上げた。 以前ここに来たときに、二度と来ないと決めたわりにあっさりと二度目になってしまった。 寝起きのせいか何処かでもういいや、と思っている自分がいた。 毎日、やることは同じ。 だからこそ、少しの刺激を求めてしまうのかもしれない。 「神白さん」 昼休みの社食で顔は知ってるけど、名前が分からない人達に囲まれた。 「今日いい匂いするね。香水?」 「いや、多分朝にシャワー浴びたからかな」 「いつも朝に浴びる人?」 「昨日知り合いと飲みに行ってたんで、たまたまですね」 こういう時に限って梓がいないのはキツイ。 何かを聞きたいけど、それほど話す相手じゃないから遠回りな感じがイライラする。 「ねえねえ、神白さんって彼氏いるの?」 散々、どうでもいいことを聞かれて、結局はコレか。 「いませんね」 「好きな人とか気になってる人は?」 「特には」 一瞬、榊原翼と坂井君が浮かんだけど、この人達に言うことじゃない。 「良かった」 ひとり控えめの子が小さく呟いた。 「あのさ、神白さんってどこに住んでるの?」 ……なんだろう。 ただの勘だけど、今までの質問の中でも一番嫌な感じがする。
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