7

4/10
前へ
/395ページ
次へ
「なんで?」 「え、なんか神白さんに似た人を近くで見かけて」 聞き返した私に、一瞬動揺して視線をそらした。 何かある。 「そうなんだ。似てた人だったんじゃない?」 めんどくさいから、そのまま返してやった。 「神白さんって会社の近くのあの一番大きいマンションに住んでるの?」 「朝に見た人が何人かいて」 榊原翼のマンションだ。 何気にいいマンションで生活しているのは流石といったところだ。 だからって、こういう馬鹿馬鹿しいウワサの的になるのはゴメンだ。 「友達のマンションなだけ。泊まるつもりもなかったし忘れ物があったから朝に帰っただけ」 ようは朝帰りの真相に興味があるんだ。 やましいことは何もない。 くだらなさすぎて、嫌になる。 「そ、そうなんだ。あ、そろそろ戻るね。ありがとう」 聞きたいこと聞いたら退散とは分かりやすい。 この様子なら梓の耳にも入っているだろう。 まぁ一回家に行ったことは暴露しているし問題はない。 「今日は珍しい組み合わせだったな」 「……勝手に寄ってきたのよ」 「それは災難だったな。大丈夫か?」 「別に平気よ。ただ面白くないわね」 「……何かあったら俺に言えよ?」 「大丈夫。さっきので既にストレス溜まったけど」 「ウワサだろ。新しいウワサが出ればすぐに消える」 そうなるまでが、意外と長い。 女はおしゃべりで興味や好奇心が強いから、ウワサの的になった子が精神的に参っているのを何度か見た。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2834人が本棚に入れています
本棚に追加