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「他人のことなんてほっとけって思うのは私だけかしら?」 昨日、榊原翼の事務所に行ったこと。 抱き締められて引き止められたこと。 スタッフの泉さんに、彼の義理の姉の杏さんに会って皆で飲みに行ったこと。 途中から記憶がなくて、彼のマンションでお世話になったこと。 おそらく、その時に見られたことでウワサが広がったこと。 全部話した。 「ネタが欲しいんでしょ」 コンビニに寄って、ビールにチューハイとつまみを買った。 冷蔵庫にあったもので簡単に作った有り合わせ。 それをつまみながら、ふたりでうんざりした。 「まぁウワサだけで嫌がらせがあるわけじゃないんだけど」 「……むしろ、女達は結華に男がいるかもって喜んでるよ」 「え、なんで?」 「坂井君狙いに決まってるじゃない」 「あぁ成る程。喜ぶわりには誰も手を出さないね」 「所詮口だけ。やっと手を出すなら、とっくに告ってる」 そうなんだよね。 群れて安全なところから見てるだけ。 そのくせ、自分以外が馴れ馴れしく近づくとキャンキャン吠える。 「ウザイ」 「仕方ないわ。今度は気をつけるしかないでしょ」 「……今度って?」 「行くかもしれないでしょ? 私も杏さんと泉さんに会ってみたいし」 「事務所で充分じゃない」 「仕事場では飲めないでしょう?」 誘う気満々なようだ。 ついでに、彼のマンションで飲んで、杏さんと泉さんに会うつもりらしい。 「結華よろしくね!」 結局、この笑みに勝てないんだよね。
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